全部、青い。

書き残さないといけない夢を見る。例えば、こういった感じに。姉と弟とわたしとで三人、アパート暮らしを始める。右隣の家からは音楽がいつも流れていた。『音符』が流れてくるので煩わしくなくて心地いい。聞こえないけどたぶん今クラシックだな、これはモ…

五月の雪

ここのところは体調がいいせいか寝起きに夢を見たのを覚えていることが多い。昼寝は現実と眠りの中を行ったり来たりしながら自分が曖昧になって部屋に拡散していく。ことにその間は幻想的な景色を見る。夢というよりは幻覚に近くなってしまうかもしれない。…

モラトリアムは課金で延長できます

「給湯温度 浴室優先です」ぽつりぽつりと今度書きたいネタや気に入ったフレーズをお風呂の中で反芻する。けれどもわたしはそれをさっぱり忘れて浴槽から出る。洗い流してしまっているんだ、生きるために必要でないものは。今のわたしには自分の命を繋ぎとめ…

人生を満喫してしまったかもしれない

20を過ぎた頃から物忘れが激しくなり、同時に過去のことを思い出すことが多くなった。わたしはいつに生きているんだ。過去のことを思い出すのは発作的で、わたしの精神を蝕む要因の一つであると医師に言われた。悪い思い出だけ思い出さないように、思い出し…

人生を満喫してしまったかもしれない

20を過ぎた頃から物忘れが激しくなり、同時に過去のことを思い出すことが多くなった。わたしはいつに生きているんだ。過去のことを思い出すのは発作的で、わたしの精神を蝕む要因の一つであると医師に言われた。悪い思い出だけ思い出さないように、思い出し…

2018年の冬とQOLの話

本は買っただけで頭が良くなった気がする。しかも買った後は好きな本ほど傷むのが怖くてページを繰ることができない。ぴかぴかの本が背表紙だけ日焼けしていく。うちの親は何を考えて西日の当たるところに本棚を作ったのか。本が可哀そうなので読んでみると…

弔イス

米を一合炊いて二人前、卵は四個常温に戻しておく。玉ねぎ二分の一個をみじん切りにし、マッシュルームは薄切りに。鶏ひき肉を適当に炒めて火が通ったら玉ねぎを透明になるまで炒める。マッシュルームをケチャップとともに追加。炒め合わせたらご飯を投入。…

ひとちゃん

昔、ひとちゃんが好きだった。恋と言うには怒られてしまいそうな淡い感情だった。保育園にいた頃の記憶はひとちゃんを芯にして、ゆるゆるとわたしを形作っていた。ひとちゃんは元気な男の子だ。よく動くしよく笑う。高い声が耳に心地よかった。わたしとひと…

頭上の備忘録

今日は雲ひとつ無い素晴らしい天気の下、なぜ空は青色を選んだのか考えていた。青色は食欲を削ぐというのに、あの日クラスのみんなで食べたバーベキューは美味しかったなとか、ずっと空が赤色だったらインスタ女子が「そら、きれい。。。」って折り紙のよう…

過去、宿無しの夜

忘れられない料理がある。学生時代に思わぬところで人擦れし、自分の下宿に戻れなくなるほど事態が悪化した夜があった。友だちの家に一泊できるか片端から助けを求め、なんとかアテがついたあのときの安堵感は如何程だったか。その友だちの家に着の身着のま…

スズメバチの輪廻

お風呂は入る前だと死ぬほど面倒臭いのに、入った後はなんとも清々しい気分になる。毎日思う。でも次の日になる頃にはお風呂に入った後の清々しい気分なんてすっかり忘れていて、また面倒だとほざく。往々にしてそんな人生を送っている。今日はスズメバチを…

好きよ好きよも嫌のうち

わたしが小さい頃、ドロップ缶を見ると無性にときめいた。今もドロップ缶があるとわくわくする。苺かな?メロンかな?薄荷かな?薄荷のドロップは、幼かったわたしたちの間ではハズレだった。辛くて鼻が痛くなるから。先日母と話したら、子ども時代、薄荷は…

何よりも優秀な冷凍庫

絵本は冷凍庫に似ている。わたしを構成する絵と文字のふるさとはきっと、父が、母が与えてくれた、絵本に漲っている全ての潤いだと思う。と思わせる程に小さな頃は読み聞かせをよくしてもらっていたものだ。その甲斐あってか今でも文字や絵に傾倒する生活を…

時をかける苺

うちの犬には好きな人がいる。Tさんはとても人当たりのいい初老の女性だ。胡散臭い宗教に入って家族の抱えた少なくない借金を返して暮らしている。わたしが犬と散歩をしているのを見かけるといつも声をかけてくれ、日々生きていることを労ってくれる。そのT…

化粧をする武士

ペンシルアイライナーをうっかり何度も折るような人生を送っている。わたしはなけなしの賢さを総動員させてペンシルタイプからリキッドタイプへ方向転換した。コストパフォーマンスがいい。仕事のある朝にメイクをしていると顔を作る速度と顔が崩れる速度が…

まだ情けないことにあの日に燻っている

夢を見た。床から天井にかけて葡萄酒色のビロードが敷かれた暗い廊下に、数字だけ書かれたドアがいくつも並んでいる。どうやら集合住宅らしい。金色の髪の少女や栗色の髪の少年とすれ違いながら、わたしは自分の部屋を探していた。手掛かりは手の甲に油性マ…

パンダ

昔からの惰性でベッドの上にぬいぐるみを敷き詰めて寝ている。今日はふとパンダのぬいぐるみを見て、ああ、動物園に行きたいな、なんて思う。わくわくとした空気を吸い、いつ見ても目に新しい動物達を見て、たっぷり陽に焦がされて帰ってくる、そんな時間を…

雨粒とスニーカーの話

先日白いスニーカーをおろした。インソールが桃色でなんとも女の子らしく自分には似合わない物だ。今日は土砂降りの雨、外出に際しててっきりスニーカーも汚れると思ったが、雨粒を受けてきらきらと輝いていた。そのときふと思い出したのが、自分が乾燥剤の…

音の雨

徒然なるままに文章を書き晒していこうと思う。今日、蝉の鳴き声がぽつりと足元に降ってきた。そうか、夏が来るのか。あの子が亡くなって幾度目か、もう数えていない。未だに"あの子"と呼べばいいのか"あいつ"と呼んでいいのかはたまた"奴"と呼ぶべきなのか…